2010年5月29日土曜日

覚書 基地について 1

私が生まれた街には米軍の基地がありました。小学生の頃、学校の窓は既に防音ガラスに変えられていましたが、訓練のために戦闘機が飛ぶと教師の声は聞こえませんでした。米軍は、ある小さな島を定期的に爆薬処理のために使っています。期限切れの爆薬は、陸地で爆発させることによって処理されます。処理の度に街全体が大きく揺れたものです。その島は、今では陸地の殆どを失い、消滅しつつあります。街の中心部、三角州になっている海に面した利便性が高い土地は米軍が基地として使用しています。川をまたいでいるため、大きな橋がかかっており、その名前はフリーダムブリッジというのですが、皮肉なことに、日本人は使用することは出来ません。米兵による性犯罪は日常茶飯事です。一時期、バイクに乗った何者かが、追い抜きざまに女性の臀部を針のようなもので刺すという事件が多発したことがありましたが、つかまった犯人は思いのほか高い地位についている将校クラスの米兵で、本国から家族と共に赴任し、地位相当の住居(一軒家)を与えられており、私の中学校の同級生の母親にラブレターを送り続けていた男でしたので印象に残っています。そのころから、私は音楽を求めて夜遊びを始めるようになりましたが、当時、街のクラブは米兵と米兵目当ての日本人女性の出会いの場でもありました。米兵達は酒を飲み、誰にでも「結婚しよう。」と言いますが、それ以外の日本語は知らないようでした。小競り合いなどが起きると、自宅へ銃を取りに帰ったりすることもあったようです。明け方の道路に薬莢が落ちていたこともありました。美味しいカクテルを出すというバーがありましたが、泥酔した米兵が飛び出して来て追いかけられた事がありましたので、私は夜間はそのバーの近くでは全速力で自転車を漕ぐようになりました。高校生になると、学年内でも目立つ程に美しい少女達は、番長クラスの不良か米兵と交際するのが常でした。少女達は学校を卒業すると子供を産みますが、その頃には父親である米兵は本国に帰っています。
性犯罪ではありませんが、老人がいきなり橋の上から河に投げ込まれたり、金目当てにドーナツ屋の店主が殺された事件などもありました。

私自身は政治的組織に属してはおりません。これは個人的な覚書です。

東京へ来て、飲み屋のアルバイトをしていた時に、青森県の三沢出身の女性を接客したことがありました。基地の話になり、私が日本に米軍基地は必要無い、と言った途端にその客は私の頬をぶちました。三沢は基地のお陰で成り立っている、お前のような小娘に何が分かる、というのが彼女の言い分でした。私はマスターに止められ、殴り返すことは出来ませんでしたが、あの時殴り返しておくべきだったと悔やんでいます。個人がどのような意見を持とうと自由だと私は考えています。ユートピアを幻視している訳ではありませんし、もともと人間というものをそれほど信用してはおりません。例えば日米安保条約が解消されることはないでしょう。必要な仕事は沢山あると思っていますし、その為に税金を払い、選挙日には少しばかりの絶望を抱えながらも投票所に出向いているのです。私が考えているのは、全ての国の、全ての軍隊が、人殺しの為にあるという事実についてです。人殺しの訓練、あるいは実践が彼等の仕事としてあるという事を、もう少し認識したうえで、現実に目を向けるべきではないのでしょうか。


白石桂

4 件のコメント:

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  2. シライシさんをぶったその下品な女性が必要だと思っているのは基地ではなく、雇用なんでしょうね。彼女は基地がなくても雇用やら、経済基盤やら、そういうものが確保されれば良いんだけど、基地=経済基盤となっているリアリティーがあって、だから混同してるんじゃないか。
    しかし私やシライシさんが「そうじゃない」と言ってそれを否定するのは無理なんだろーね。彼女にとっての基地、というのは彼女の理解の中にある。

    他方、シライシさんにとり、「基地」というのは犯罪を犯す米兵であり、騒音であるんだなと思いました。そもそも基地がどうしてあるのか?というと、犯罪を犯す米兵を日本につれてきたいとか、騒音を起こしたいとか、そういうことではないはず。しかし犯罪やら、騒音やら、そういう副産物が生じていることも確かで、そういう副産物が、そもそもの意義を感じさせられなくしているように思う。
    私は基地が必要だと思っている立場だから、そもそもの意義を見えなくする、そういった要素、それをどうするか、そういうことについても思いをめぐらせるべきなんだろうなーと思ったわ。

    物事は複眼的に見ないといけないと思った次第。

    お尻刺したりしないからジン飲みに来て~

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  3. コメントありがとう。貴方の仕事、それに対する姿勢に敬服しています。それぞれが、それぞれの角度からそれぞれの真実を見ている。しかしそれ以前にあなたは大事な友人です。

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